藍の生葉染めによる紫染め

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 生葉染めでは、インジゴという藍の色素が緑の葉の中にある無色の成分から生まれてきます。そのとき、赤色のインジルビンという色素が生成することがあります。インジルビンを多く生成させれば、インジゴの青と混ざって、紫色の染色物を得ることが可能です。生葉染めを煮染めで行うと紫が得られるという現象については、琉球藍をはじめとして、以前から知られており、タデアイの煮染めにより赤紫に染めるという方法も報告されています。
 文献:アキヤマセイコ『藍草の煮染め方法』、染織αNo196、 pp46-49(1997)

下記に記載のことを含めた、藍の生葉による紫染めについてのテキストが、PDFファイルとしてダウンロードできます

 藍の生葉染めにおいて、アルカリやエタノールをうまく使うことで、煮染めをすることなく、絹を青紫から赤紫色に染色できることがわかり、その詳細は、日本家政学会誌(1998年9月号)に掲載されましたまた、染織αのNo225、p64-67(1999年12月号)でも紹介しています。ここでは、その方法を以下に紹介します。 藍は、もちろん青を染めるのが最も重要ですが、タデアイという一つの植物から、様々な色を染めることができる、というのも興味深いことだと思います。
 なお、この方法をどこかに紹介・引用される場合は、必ず次のいずれかの文献を明示して下さい。

◆牛田智 「生葉染色の化学的な観察とその実際方法−藍の生葉染めによる絹の紫染め」、染織αNo225、p64-67 (1999)
◆牛田智、谷上由香 「藍の生葉染めにおける絹の赤紫染色の条件」、日本家政学会誌、49巻、9号、p1033-1036 (1998)
 


  1. 生葉液を用意する前に、染色絹布のアルカリ前処理(5%炭酸ナトリウム水溶液に5分間浸漬し、取り出し、絞らずに自然乾燥)を行う。ここでは、乾燥重量が3.75gの絹のハンカチを用いたが、5%炭酸ナトリウム水溶液をを吸収させて、乾燥させると、ハンカチの乾燥重量が5.2g程度となった。ここでアルカリ液の吸収量が少ないと、アルカリ不足になるので、染色物がアルカリ液を十分吸収できなければ、アルカリ液の濃度を上げる必要がある。
  2. 藍の生葉20g〜30gをはさみで刻んで、袋状のガーゼの中に入れ、輪ゴムで口を縛ったものを1リットルの容器中の20%エタノール水溶液500ml(エタノール100mlと水400mlを混ぜたもの)に浸し、ガーゼに入った生葉を粘りがでるくらいまで10分間ほど揉む(箕輪の方法に準拠)。揉み方が足りないと、藍の色素のもとになる成分がしっかり抽出されてこないので、力を加えて押したり、握ったりしながら、よく揉み出す。その後30-50分間放置(インジカンの酵素分解を行うための時間に相当)する。生葉を入れた袋を取り出し、キッチンペーパー等でろ過すると、色が汚めになるのを防ぐことができる。
  3. 生葉を取り出し、高温で染める場合は、湯煎により加温したのち、1の、前処理してほぼ乾燥状態となった絹のハンカチ(3.75g)を、この液に1時間浸漬し、むら染めにならにようによく混ぜたりときどき布をガラス棒で軽く撹拌して染色する。
  4. 染色終了後、しばらく放置して酸化させ、その後中性洗剤で水洗いする。
  染色される色アルカリ前処理を1.5%炭酸ナトリウムにする、エタノールの濃度を10%にする、染色温度をあげる(50℃)などすると、染色される色が変わる。この染色のポイントは、アルカリ性で染めるということです。pHが10以上、10.5程度のアルカリ性だと、赤紫が出ます。アルカリは、被染物にしみ込ませて供給する形をとっていますが、被染物を入れてから、pHが10以上になるように、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)の水溶液を加えて、染色液をアルカリ性にする方法でも構いません。

絹のハンカチを所定のアルカリ水溶液に浸漬し、絞らずに乾燥させます。絞ると、布に保持されるアルカリが不足し、紫になりません。

茎を除いた藍の生葉の必要量を秤量します。

袋状のガーゼのハンカチを半分に切り、その中に藍の葉をハサミで切って、入れていきます。

ガーゼの口を縛り、輪ゴムなどでとめます。

生葉を入れたガーゼのハンカチをエタノールを含む水に入れ、10分程度よくもみ、生葉液を作ります。

生葉の成分が抽出されてきます。

予め、アルカリで所定の前処理をした絹布を入れ、30分から1時間ほどつけこみます。

布を取り出し、空気中でしばらく酸化させます。その後、中性洗剤でよく水洗します。


染色条件と染色結果
No 生葉液のエタノール濃度 絹布のアルカリ前処理 染色温度 染色結果
(色あい)
(1) 20% 5%炭酸ナトリウム 50℃ 赤みの紫色













青みの紫色
(2) 30% 10%炭酸ナトリウム 27℃
(3) 30% 5%炭酸ナトリウム 27℃
(4) 20%(生葉を揉みだした後に添加)  5%炭酸ナトリウム 27℃
(5) 20% 5%炭酸ナトリウム 27℃
(6) 20% 1.25%炭酸ナトリウム 27℃
(7) 20% 5%炭酸ナトリウム+4%炭酸水素ナトリウム=3:1(pH=10.5) 27℃
(8) 20% 5%炭酸ナトリウム+4%炭酸水素ナトリウム=1:1(pH=10.0) 27℃
(9) 10% 5%炭酸ナトリウム 27℃
(10) 5% 5%炭酸ナトリウム 27℃
(11) 20% 0.05%炭酸ナトリウム 27℃ 薄い緑色
(12) 40% 5%炭酸ナトリウム 27℃ 薄い緑色
(13) 20% 0.08%炭酸ナトリウム 27℃ 薄い灰色

・ここで用いた炭酸ナトリウムは無水物(慣用名:ソーダ灰)で、その水溶液のpHは約11.8である。
・アルカリ液は、絹布が十分吸収できる量あればよい。ただし、絹布に十分しみこんでいないと、染色液を十分なアルカリ性にすることができない。
・アルカリの強さは、炭酸ナトリウムの濃度か、炭酸ナトリウム−炭酸水素ナトリウムの混合比により調節している。
・エタノールは、変性アルコールでも、消毒用アルコールでもよい。
2001年2月にデータを追加

染めあがりの色は、下の写真のようになります。表の番号と写真の番号が一致しています。 番号が小さいほど、赤みの強い色に染まっています。赤みの強い色に仕上がった場合、もう少し青みを足したければ、通常の生葉染めを行って重ね染めをすれば、青みが加わった色になります。
No11やNo13のようにアルカリ不足だと、青にも紫にもなりません。
右下の水色(No14)は、通常の生葉染めで染めた時の色です。

 

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1998年10月作成、1999年9月赤字部分を補足、2001年2月データを追加、2001年11月一部加筆